はい こんぺー

山形県朝日町今平(こんぺい)のたのしい暮らし

愛のくるみ餅

食いしん坊の私にとって、各土地の食べものを満喫することはもはやライフワーク。

中でも山形の食文化は脱帽もの、かなりの衝撃を受けた。

今回は、こちらに来て最初に食べたごはんの紹介。山形のいちばん美味しいごはんはお店じゃなくて家庭にあるのだ(故に、住まないとなかなか食べられない)。

 

念願叶って、A子さんちで初ごはんを達成した冬のある日のこと。

 

この日のメニューは、ぜんまいの油炒め・麻婆豆腐・炊きたて新米・赤ネギとわかめの味噌汁・そしてくるみ餅。「なんにもねぇけどよ~、あるもんでつくった~」というA子さんのほんわか笑顔とりんごの薪ストーブにあったまりつつ、みんなで晩ごはんタイムです。

 

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ぜんまいの油炒め:

春に収穫して干しておいた(あるいは塩漬けした)ぜんまいを戻し、油と醤油で炒め煮にしたもの。油で炒めるっていうのが絶妙。そもそも四国~東京でぜんまいなんてほとんど食べたことなかった。あっても中国産の水煮だよね??

さらっと"ぜんまいを戻す"などと書いてあるが、これめっちゃくちゃ時間がかかる。一晩ぐらい、何度も何度も水を替えながらうるかす※。

 

麻婆豆腐:

美味しかったのでレシピを聞いて、まったく同じ材料使ったのに再現できなかった謎の料理。ごま油とにんにくとひき肉と豆腐とめんつゆと片栗粉で作るお手軽メニュー。

 

炊きたて新米:

こんペーの田んぼで丁寧に育てられ、杭掛けで天日干ししたはえぬき。

 

赤ネギとわかめの味噌汁:

A子さんが畑で大事に育てた赤ネギ(根元が赤い在来野菜)。甘くて旨いのよ~。

 

くるみ餅:

何といってもこれがすごい。餅に味噌とくるみを混ぜたくるみ味噌餅を作り、すりつぶしたくるみを伸ばした餡をかけた一品。口に届くまで、気が遠くなるような手間がかかっている。

まず餅米がこんペー産。前年の収穫分から種籾を取っておいて、春は育苗して田植え、夏には草刈って秋に収穫。その後杭掛け、脱穀、精米、浸水、蒸してついてやっと餅に。

くるみは秋に山に行って拾い、うるかした後洗って果肉を落とし、種を炒り、一個一個割り、ほじって中身(仁)を出し、ようやくすり鉢いっぱい集めてすりつぶし、先ほどの餅に混ぜて、やーっとくるみ餅に…。うひょ~~~~

 

 

A子さんは「なんにもねぇけどよ~」と言うけど、否。

一食の晩ごはんに一年間の手間ひまと、食べる人を思う愛がめちゃくちゃ詰まっている。めっちゃおいしいんです。

 

これまで、色々なものを食べてきたけど、こんーーなにも手間のかかったごはんを食べたことはなかった。この一食のために、調理だけでいったい何時間かかってるんだろうか。しかもこれが、「なんにもねぇ」ときの普通の晩ごはん(厳密にはお餅はちょっと特別だけど、これはまた今度)。衝撃、感激、というか絶句…。

 

 

この一食ですっかり山形の暮らしに心奪われてしまい、冬の毎日も頑張れると思ったのだった。山形ごはん、またレポートします。

 

 

※余談だが、こちらの方言に「うるかす」というのがある。="たっぷりの水に浸けてしばらく置いておく"、みたいな意味の言葉。詳しく調べたわけではないけど、思うに山形の食べものには「うるかさ」ないといけないものが多すぎるのでこの言葉が生まれたのではないか。塩漬けのわらび、干したぜんまい、青菜漬、干したあけびの皮、凍み大根。いずれも冬の保存食。本当に山形の食文化に特化した言葉だなぁと思う。なお、セットで「すだらかす」="ひたひたになったもの・濡れたものを、かごやざるなどにあけて放置し水を切る"という意味の言葉もある。